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一次性MRと二次性MRをまず分けて考える理由

一次性MRと二次性MRを分けることは、単なる分類ではない。その後の重症度評価、介入のタイミング、治療方法を決める前提になる。病型を誤ると、使うべき基準も、選ぶべき治療も変わってしまう。

MRに介入が必要かを考える前に、まず「なぜ逆流しているのか」を確認する必要がある。弁そのものが壊れているのか、左室リモデリングの結果として逆流しているのかで、評価基準も治療戦略も大きく変わる。

要点

一次性MRと二次性MRは、同じ「僧帽弁逆流」でも病態が異なる。一次性MRの基準を二次性MRにそのまま当てはめる、あるいはその逆を行うと、重症度評価や治療方針を誤る可能性がある。

要点まとめ

  • 一次性MRは、弁尖・腱索など僧帽弁装置そのものの異常によって起こる。
  • 二次性MRは、弁自体ではなく左室リモデリングが主な原因になる。弁尖は大きく壊れていなくても、乳頭筋の偏位や弁輪拡大によって接合不全が起こる。
  • 介入の閾値、治療アプローチ、予後は一次性MRと二次性MRで大きく異なる。
  • ACC/AHA 2020 では、重症二次性MRの定量基準は一次性MRと同じ重症域(EROA ≥ 0.40 cm²)として扱われる。ただし二次性MRでは、同じ EROA 値でも左室機能障害の文脈によって臨床的意味が大きく異なり、重症未満の値でも予後に影響することがある。
  • 重症度を判定する前に、まず機序を確認することが重要である。

このページを使う場面

心エコーで有意なMRを指摘されたが、それが弁そのものの異常なのか、左室リモデリングによるものなのか判断に迷う場面。あるいは、レポートに一次性・二次性の区別が明記されていない場合の確認に使う。

カラードプラだけでは見分けにくい二つのMR

カラードプラで大きな逆流ジェットが見えれば、MRが存在することは分かる。しかし、それだけでは「なぜ逆流しているのか」は分からない。

一次性MRでは、僧帽弁装置そのものに異常がある。典型例は、粘液腫様変性による弁尖逸脱、腱索断裂によるフレイルリーフレット、感染性心内膜炎による穿孔、リウマチ性変化による接合不全などである。

一方、二次性MRでは、弁尖自体は大きく壊れていない。拡大・機能低下した左室によって乳頭筋が偏位し、弁輪が拡大することで、弁尖が十分に接合できなくなる。

なぜ機序が治療方針を決めるのか

一次性MRでは、治療の主なターゲットは僧帽弁そのものである。逆流による慢性的な容量負荷が左室リモデリングを進行させるため、弁修復または弁置換によって逆流口をなくすことが、病態に直接介入する治療になる。

二次性MRでは、治療の主なターゲットは左室である。MRは心室疾患の原因というより、左室リモデリングの結果として生じる。弁だけを治しても症状が軽くなることはあるが、背景にある心筋障害そのものが改善するわけではない。

そのため、二次性MRではまずガイドラインに基づく薬物療法、つまりGDMTの最適化が基本になる。弁介入は、十分な内科的治療を行ってもMRが残り、症状や心不全イベントが問題となる選択された患者で検討される。

同じMRでも、数字の意味は同じではない

重症度の数字は、単独では解釈できない。

ACC/AHA 2020 VHD guideline では、重症二次性MRの定量的な重症基準は、基本的に一次性MRと同じ重症域——EROA ≥ 0.40 cm²、regurgitant volume ≥ 60 mL/beat として扱われる。

ただし、二次性MRでは、その数字の臨床的な意味が一次性MRとは異なる。二次性MRは、すでに左室機能低下や左室リモデリングが存在する文脈で生じるため、同じ逆流量でも患者に与える影響が大きくなることがある。

また、outcome studies では、EROA が 0.20 cm² 程度の中等度二次性MRでも予後不良と関連することが示されている。これは「ACC/AHA 2020 が二次性MRの重症閾値を 0.20 cm² と定義している」という意味ではない。二次性MRでは、EROA という単一の数字だけではなく、左室サイズ・左室機能・肺高血圧・症状・GDMT への反応を含めた文脈で評価する必要がある、ということである。

一次性MRの考え方を二次性MRにそのまま当てはめると、病変の臨床的インパクトを過小評価する可能性がある。逆に、二次性MRの文脈を一次性MRに持ち込むと、本来の介入基準を満たす前に介入を検討してしまう可能性がある。

機序が不明なまま、介入判断に進まない

TTEだけでMRの機序がはっきりしない場合は、重症度や介入適応を判断する前に追加評価を検討する。描出不良・複雑な弁形態・心臓手術の既往・感染性心内膜炎の疑いがある場合には、TEEが有用である。一次性MRなのか二次性MRなのかが不明なまま、EROAや逆流量の数字だけで介入判断に進むべきではない。まず機序を確認し、そのうえで適切な病型の基準を使って評価する。

実際に使う

一次性機序が確認されたら、Primary MR Severity Toolで重症度を評価する。

Primary MR Severity Tool