TR重症度基準——一覧で確認する
ACC/AHA VHD 2020 に基づくTR重症度評価。重症度を判定する主要パラメータ、補助所見、そしてTR Vmaxが重症度基準に含まれない理由を整理します。
エコーレポートに「TR Vmax 3.2 m/s、右房拡大、定性的評価で重症TR」と書かれていたとき、どの所見が本当に重症度を決めるのか——そして、なぜTR Vmaxはその中に入らないのかを確認するためのページです。
要点
TR重症度は、ベナコントラクタ幅、PISA EROA、逆流量、肝静脈収縮期逆流、CW Doppler波形、右房・右室拡大などを組み合わせて評価します。TR Vmaxは圧較差を反映する指標であり、TR重症度を示す指標ではありません。
要点まとめ
- ベナコントラクタ幅 ≥ 0.7 cm は、TRの主要な重症域シグナルです。
- PISA EROA ≥ 0.40 cm²、逆流量 ≥ 45 mL/beat は、重症TRを支持する主要な定量基準です。
- 肝静脈収縮期逆流、稠密で三角形のCW Doppler波形、右房・右室拡大は、強力な補助所見です。
- IVC拡張は右房圧上昇を示す参考所見ですが、重症度そのものを決める指標ではありません。
- TR Vmaxは簡略Bernoulli式によりRV-RA圧較差を反映します。PASP推定には有用ですが、TR重症度グレーディングには使いません。
- 重症TRでは圧平衡により、逆流負荷が最大でもTR Vmaxが低く見えることがあります。
- TR重症度は、定量パラメータと補助所見を組み合わせた統合評価で判断します。
このページを使う場面
エコーレポートのTR所見を読み解くときに使います。どの所見がTR重症度を示し、どの所見が肺高血圧や右房圧上昇の評価に使われるのかを整理したいときに役立ちます。TR Severity Toolを使う前の確認にも向いています。
| パラメータ | 重症域の閾値・所見 | 重症度基準になるか? |
|---|---|---|
| ベナコントラクタ幅 | ≥ 0.7 cm | はい——主要な定量基準 |
| PISA EROA | ≥ 0.40 cm² | はい——主要な定量基準 |
| 逆流量 | ≥ 45 mL/beat | はい——主要な定量基準 |
| 肝静脈収縮期血流 | 収縮期逆流あり | はい——強力な補助所見 |
| CW Doppler波形 | 稠密、三角形 | はい——補助所見 |
| 右房・右室拡大 | あり | はい——慢性容量負荷の補助所見 |
| IVC拡張 | ≥ 21 mm、吸気虚脱 < 50% | 補助所見——右房圧上昇の参考所見 |
| TR Vmax | いかなる値でも | いいえ——RV-RA圧較差を反映し、逆流量を示すものではない |
なぜ統合評価が重要か
単一のパラメータだけでTR重症度を確実に判定することはできません。ベナコントラクタ幅、EROA、逆流量は、逆流口の大きさと逆流量を定量的に示します。肝静脈収縮期逆流、CW Doppler波形、右心系拡大は、TRが血行動態的に有意であることを裏づける補助所見です。
そのため、TR重症度は複数の所見を組み合わせて読むのが基本です。とくに、個々の測定値が不一致、境界域、または技術的に不十分なときには、統合評価が重要になります。
TR Vmax:肺高血圧の評価に有用——TR重症度には使わない
TR Vmaxは、連続波ドプラで測定した三尖弁逆流ジェットのピーク速度です。簡略Bernoulli式によってRV-RA収縮期圧較差を推定し、推定右房圧を加えることでPASP推定に使われます。
このためTR Vmaxは臨床的に有用ですが、その役割は肺高血圧評価であって、TR重症度グレーディングではありません。重症TRでは、大量の逆流により右房圧が上昇し、RV収縮期圧との圧較差が小さくなるため、TR Vmaxが低く見えることがあります。
TR Vmaxの罠
TR Vmaxを使ってTRが軽症と安心してはいけません。重症TR、あるいはtorrential TRでは、圧平衡のためにTR Vmaxが低く見えることがあります。低いTR Vmaxは、逆流が軽いことを意味するとは限りません。TR重症度は、ベナコントラクタ幅、EROA、逆流量、肝静脈収縮期逆流、CW Doppler波形、右房・右室拡大などを組み合わせて判断してください。
TR重症度レンジ:軽症・中等症・重症の目安
| パラメータ | 軽症 | 中等症 | 重症 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ベナコントラクタ幅 | < 0.3 cm | 0.3–0.69 cm | ≥ 0.7 cm | 主要な定量パラメータ。複数jetや描出条件で評価が難しいことがある |
| PISA EROA | < 0.20 cm² | 0.20–0.39 cm² | ≥ 0.40 cm² | PISAの仮定が崩れると誤差が出やすい |
| 逆流量 | < 30 mL/beat | 30–44 mL/beat | ≥ 45 mL/beat | 流量条件や測定精度の影響を受ける |
| 肝静脈収縮期血流 | 通常は収縮期優位 | 鈍化しうる | 収縮期逆流あり | 強力な補助所見だが、単独では重症度を決めない |
| CW Doppler波形 | 淡い / parabolic | 中間的 | 稠密で三角形 | 補助所見として使う |
| 右房・右室拡大 | 通常なし | ありうる | 慢性重症TRでよくみられる | 慢性経過を示す補助所見 |
| IVC拡張 | 通常なし | ありうる | しばしば伴う | 右房圧上昇を示す参考所見であり、重症度の主判定には使わない |
| TR Vmax | — | — | — | PASP推定に使う指標であり、TR重症度基準ではない |
- Otto CM, et al. 2020 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Valvular Heart Disease. J Am Coll Cardiol. 2021;77(4):e25–e197.
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- Lancellotti P, et al. Recommendations for the echocardiographic assessment of native valvular regurgitation. Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2013.