症例

肥満・Mallampati IV・頸部可動制限:あなたはどうする?

65歳男性、挿管困難の予測因子が複数。術前に気道管理の方針をどう決めるか。

症例提示

65歳男性。腹部手術予定。BMI 32、睡眠時無呼吸あり、Mallampati IV、頸部可動制限あり。

術前気道評価が依頼された。覚醒しており、協力的。安静時の呼吸は問題なし。

第一印象

この気道は難しそう——だが、どの程度難しいか? そして、それは技術選択にどう影響するか?

LEMON評価

項目所見懸念点
外観肥満(BMI 32)軟部組織増加、頸部可動域低下の可能性
3-3-2評価正式な計測なし開口制限・甲状頤距離短縮があればリスク追加
MallampatiIV口咽頭が見えない——挿管困難の高リスク
気道閉塞睡眠時無呼吸あり導入後の上気道虚脱の可能性
頸部可動性制限あり気道軸の整列が困難

複数の独立した予測因子

各因子単独でも十分な注意を要する。複数が重なることで、挿管困難と換気困難の両方が予測される。

「挿管すること」より「気道をコントロールすること」

  • 複数のLEMON陽性因子が初回喉頭鏡失敗を予測する
  • 睡眠時無呼吸と肥満の組み合わせはマスク換気困難のリスクを高める
  • 頸部可動制限が声門展開をさらに難しくする
  • 導入後に気道コントロールを失うと、挿管不能・酸素化不能(CICO)へ急速に移行しうる

導入後に喉頭鏡が失敗したら

マスク換気も困難な可能性がある。救済手段は急速に失われる。肥満・睡眠時無呼吸の患者では低酸素血症の進行が予想より速い。

今から麻酔導入しようとしている。気道戦略はどうする?

  1. 1.

    リスクの複合効果を過小評価する可能性——全LEMON因子を先に評価すること

  2. 2.
    通常導入・ビデオ喉頭鏡準備検討

    器具は助けになるが、導入後にマスク換気も失敗した場合の選択肢は限られる

教育的要点

  • 目的は挿管ではない。気道をコントロールすることだ。
  • 気道コントロールの喪失は導入後に起きる——だからこそ、判断は導入前に下さなければならない。
  • 覚醒下挿管は自発呼吸を保つ——導入後の試みとは安全余裕が根本的に異なる。
  • LEMON陽性因子が2つ以上あると、累積リスクは個々の因子の単純な和を超える。
  • 肥満と睡眠時無呼吸の組み合わせはマスク換気困難を予測する——導入後の喉頭鏡失敗時に決定的となりうる。

次に何をするか?

なぜ必要か: 導入後に気道コントロールを失うと、換気も挿管も困難になる可能性がある。

気道戦略を決める →