症例
放射線後の頸部手術:失敗が許されない気道
72歳男性、頭頸部癌で放射線治療歴。頸部手術予定。重篤な気道所見が複数——戦略はどうする?
症例提示
72歳男性。頸部手術予定。頭頸部癌に対する放射線治療歴あり。開口制限、頸部可動制限(高度)、嗄声あり。
術前気道評価が依頼された。覚醒しており、協力的。声は明らかに嗄声。頸部は硬く、屈曲・伸展ともほとんど不可能。
第一印象
これは「難しい気道」ではなく「予測できない気道」だ。放射線後の解剖は外見上は保たれていても、喉頭鏡では全く別の動きをすることがある。
LEMON評価
| 項目 | 所見 | 懸念点 |
|---|---|---|
| 外観 | 放射線後変化、頸部硬直 | 組織線維化、解剖学的歪み |
| 3-3-2評価 | 開口制限あり | 喉頭鏡の挿入が高度に制限される可能性 |
| Mallampati | おそらく高い(開口制限で評価困難) | 信頼できる評価ができない |
| 気道閉塞 | 嗄声あり | 声門・声門上の関与の可能性 |
| 頸部可動性 | 高度制限 | 気道軸の整列が不可能——声門展開は不良 |
これはCase 1ではない
Case 1では挿管困難でも救済は可能だった。このケースでは、喉頭鏡失敗とマスク換気困難が同時に起きうる。CICOへの道は短い。
なぜリスクが本質的に高いのか
- 放射線線維化により組織の面が歪む——気道は開通しているように見えても挿管できない場合がある
- 開口制限により直達・ビデオ喉頭鏡どちらでもブレード挿入が制限される
- 高度な頸部固定により体位補正が不可能
- 嗄声は声門・声門上の関与を示唆——閉塞リスクは現実的
- 喉頭鏡が失敗したとき、マスク換気も失敗しうる——最初から救済手段が限られている
導入後に喉頭鏡が失敗したら
放射線線維化と解剖学的歪みにより、マスク換気が不可能となりうる。緊急外科的気道確保が唯一の選択肢となるかもしれないが、頸部の線維化はそれも困難にする。
これから麻酔導入する。気道戦略はどうする?
- 1.通常導入・直達喉頭鏡⚠ 非推奨
放射線後の解剖は予測不能——警告なく失敗する可能性がある
- 2.通常導入・ビデオ喉頭鏡準備⚠ 非推奨
開口制限でデバイス挿入が不可能な場合がある;換気失敗リスクにも対応しない
- 3.覚醒下挿管✓ 推奨
自発呼吸を保ちながら表面麻酔下で気道を評価できる——コミット前の確認が可能
教育的要点
- 放射線後気道は予測不能。外見上の解剖と実際に挿管できる解剖は異なることがある。
- 導入前に失敗を想定する——導入後ではなく。
- 嗄声は警告サイン。声門・声門上の関与を示唆している。
- 放射線後気道では、喉頭鏡失敗とマスク換気困難が同時に起きうる。
- 覚醒下挿管は表面麻酔下で気道を評価できる——患者が自発呼吸しながら。
次の臨床的問い
挿管も換気も両方失敗したらどうなるか?
緊急気道失敗(CICO)→