AS重症度基準:4つの指標とその読み方
ACC/AHA VHD 2020はASの重症度をAVA・Vmax・平均圧較差・DVIなどを組み合わせて評価する。各閾値の意味と不一致が生じる理由を理解することが、重症度分類を正しく行う基盤となる。
AS重症度評価ツールは、入力された数値からASの表現型を分類する。このページでは、それぞれの閾値が何を意味するのか、なぜ数値が食い違うのか、そして低流量パターンでどのように解釈が変わるのかを整理する。
要点
重症ASは、一般にAVA < 1.0 cm²、Vmax ≥ 4.0 m/s、平均圧較差 ≥ 40 mmHgで判断される。ただし、VmaxとMGは流量の影響を強く受ける。低流量では、真の重症ASでも圧較差が40 mmHg未満になることがある。DVIはLVOT径を使わないため、計測誤差の影響を受けにくく、不一致を評価するときの有用な補助指標になる。
要点まとめ
- AVA < 1.0 cm²は重症ASを示唆する。ただし連続の式で算出されるため、LVOT径の計測誤差がAVAに大きく影響する。
- Vmax ≥ 4.0 m/s、平均圧較差 ≥ 40 mmHgは、正常流量では重症ASを強く示す。
- 低流量では、真の重症ASでもVmaxや平均圧較差が重症域に届かないことがある。
- DVI < 0.25は重症ASを支持する補助指標であり、LVOT径を使わないため、AVA計算の誤差を確認するうえで有用である。
- SVI < 35 mL/m²は低流量ASを考える重要な基準である。
- AVAと圧較差が一致しないときは、どちらの数字を信じるかではなく、まず流量状態を確認する。
このページを使う場面
心エコーレポートにAS関連の数値が記載されているが、AVA、Vmax、平均圧較差、DVIの意味や、数値が一致しない理由を整理したいとき。AS重症度評価ツールを使う前の確認にも使える。
AS重症度を評価する4つの主要指標
| パラメータ | 軽症 | 中等症 | 重症 | 流量依存性 |
|---|---|---|---|---|
| 大動脈弁口面積(AVA) | > 1.5 cm² | 1.0–1.5 cm² | < 1.0 cm² | 中等度——連続の式で算出されるため、LVOT径の計測誤差がAVAに大きく影響する |
| ピーク大動脈弁口速度(Vmax) | < 3.0 m/s | 3.0–3.9 m/s | ≥ 4.0 m/s | 高——流量の影響を強く受ける。低SVでは重症ASでもVmaxが低く出ることがある |
| 平均圧較差 | < 20 mmHg | 20–39 mmHg | ≥ 40 mmHg | 高——速度の2乗に依存するため、低流量では大きく低下しやすい |
| 次元なし速度指数(DVI) | > 0.35 | 0.25–0.35 | < 0.25 | 比較的低い——LVOT VTIとAV VTIの比で評価するため、LVOT径の計測誤差を受けない。ただし他の指標と合わせて解釈する |
低流量パターン:通常の閾値だけでは判断しにくい場合
| パターン | SVI | LVEF | 主な所見 | 次のステップ |
|---|---|---|---|---|
| 正常流量・高圧較差 | ≥ 35 mL/m² | いずれでも | AVA < 1.0 cm²かつ平均圧較差 ≥ 40 mmHg——一致型 | 重症AS確定——介入評価へ進む |
| 古典的LFLG(低流量・低圧較差・LVEF低下) | < 35 mL/m² | < 50% | AVA < 1.0 cm²、圧較差 < 40 mmHg——左室収縮低下を背景に、真の重症ASと偽性重症ASの鑑別が必要 | 低用量ドブタミン負荷心エコー、またはCTカルシウムスコアで重症度を確認 |
| 逆説性LFLG(低流量・低圧較差・LVEF保持) | < 35 mL/m² | ≥ 50% | 小さく肥大したLV——LVEF保持にもかかわらずSVIが低い | 重症度確認:CTカルシウムスコアが有用。DSEは症例によって補助的に検討される |
| 不一致型AS(正常流量・AVA重症・圧較差非重症) | ≥ 35 mL/m² | いずれでも | AVA < 1.0 cm²だが圧較差 < 40 mmHg——流量が保たれているにもかかわらず、AVAと圧較差が一致しない | LVOT径計測誤差を確認;DVIを評価;必要に応じて追加画像検査を検討 |
クロスチェックとしてのDVI
DVIは、LVOT VTIを大動脈弁口部のVTIで割って求める。LVOT径を使わないため、AVA計算で問題となるLVOT径の計測誤差を受けにくい。
DVI < 0.25は重症ASを支持する所見であり、AVAと圧較差が一致しない場合や、LVOT径の測定に不確実性がある場合に有用である。ただし、DVIだけで重症度を確定するべきではない。AVA、Vmax、平均圧較差、SVI、LVEF、弁石灰化の程度と合わせて判断する。
周術期的意義:これらの閾値をベッドサイドでどう読むか
- 高圧較差を伴う重症AS——Vmax ≥ 4.0 m/sまたは平均圧較差 ≥ 40 mmHgを伴うASでは、左室流出に対する固定性狭窄が存在する。麻酔導入や術中管理では、前負荷、後負荷、洞調律、冠灌流圧の維持が重要になる。
- 非心臓手術前にLFLG ASが疑われる場合は、可能であれば術前に循環器科での評価を行う。低流量・低圧較差ASは麻酔下で血行動態が不安定になりやすく、術前に重症度と介入適応を整理しておく必要がある。
- 術前レポートにAVA 0.9 cm²・平均圧較差 28 mmHgと記載されている場合、中等症と判断する前に流量状態(SVI・LVEF)を評価する。
- 周術期計画では、単なる重症度グレードよりも、ASの表現型を把握することが重要である。AS重症度評価ツールは、数値をもとに「高圧較差AS」「古典的LFLG」「逆説性LFLG」「不一致型AS」などの表現型を返す。
最も多い周術期の誤読
平均圧較差が28〜35 mmHg程度だと、「中等症AS」と判断されやすい。しかしSVI < 35 mL/m²の低流量状態では、真の重症ASでも圧較差がこの範囲にとどまることがある。AVAが重症域にあるのに圧較差が低い場合は、まずSVIとLVEFを確認する。圧較差だけで中等症と判断しない。