HFrEFとHFpEFを周術期・ICUでどう考えるか
EFだけで心不全の全体像は決まりません。HFrEFは「前に出せない問題」、HFpEFは「受け止めにくい問題」と考えると整理しやすいです。
EFは重要な指標ですが、それだけでは循環の全体像は見えません。HFrEFとHFpEFでは、周術期や ICU での問題の出方が異なります。「前に出せないのか」「受け止められないのか」を分けて考えることが、次の一手を見つける近道です。
なぜEFだけでは不十分か
- EFが低くても、代償が効いていて安静時はそれなりに安定していることがある
- EFが保たれていても、充満圧や congestion の問題は強く出うる
- EFは systolic contraction の割合を表すが、flow・filling・reserve・congestion を全部は表さない
- 周術期や ICU では、安静時の安定より「余裕のなさ」が問題になる
- filling の問題と forward flow の問題を混同すると、判断が狂いやすい
「EFが高い・低い」だけでなく、「いま何が前面に出ているか」を考えることが大切です。
まずこう整理する
2つの視点に分けると、判断の方向が見えやすくなります。
HFrEF(EF低下型)
前向き拍出・reserve の問題が前面に出やすい。「前に出せない」状態として理解する。導入の血管拡張で余裕のなさが露わになりやすい。
HFpEF(EF保存型)
充満・stiffness・congestion の問題が前面に出やすい。「受け止めにくい」状態として理解する。頻脈や輸液過多で急激に悪化しやすい。
実際は混在する
きれいに分かれないことも多い。大事なのは「いま何が前面に出ているか」を考えること。
HFrEF vs HFpEF の整理
項目
HFrEF
HFpEF
HFrEF
前向き拍出・reserve の低下
HFpEF
充満圧上昇・stiffness・congestion
HFrEF
低 CO、低 VTI、低血圧、易疲労
HFpEF
息切れ、浮腫、頻脈耐性低下、SpO₂ 低下
HFrEF
LVEF、CO、LVOT VTI、MR、LV サイズ
HFpEF
E/e'、LAVI、TR velocity、LA 負荷、肺うっ血
HFrEF
導入時の血管拡張で低拍出が出やすい。昇圧薬の早めの準備を。
HFpEF
頻脈・輸液過多で充満圧が急上昇しやすい。うっ血兆候に注意。
HFrEF
心不全の全体像を EF の低さだけで決めない
HFpEF
安全性を EF の正常だけで決めない
やりがちな誤解
- ✕HFpEF は「EF が正常だから安心」の典型的な落とし穴
- ✕HFrEF でも、いま何が循環を崩しているかを分けて考える — EF だけでは全体像は見えない
- ✕EF だけで fluid tolerance や congestion を判断しない
- ✕filling の問題と forward flow の問題を混同しない
- ✕HFrEF と HFpEF できれいに分かれないことも多い — 「いま何が前面か」を考える
術中・ICUでどう使うか
HFrEF の患者(術中・導入時)
血管拡張で「隠れていた低拍出」が出やすい。昇圧薬と動脈ラインを早めに準備する。CO / LVOT VTI で forward reserve を確認する。
HFpEF の患者(術中・ICU)
頻脈・輸液過多で充満圧が急上昇しやすい。E/e'・LAVI・SpO₂ トレンドを見ながら、うっ血兆候に早めに対応する。
ICU での整理
「前に出ていないのか(forward problem)」と「受け止められないのか(filling / congestion problem)」を分けて考える。両方が混在することも多い。
どちらの場合も
CO / LVOT VTI / E/e' / LAVI / RV 所見を組み合わせる。EF だけで判断しない。
「EF が高い・低い」だけでなく「いま何が前面に出ているか」を考えることで、周術期・ICU の次の一手が見えてきます。
ミニシナリオ
3例で、HFrEF・HFpEF・混在の違いを確認します。
LVEF 32%、LVOT VTI 11 cm、CO 2.5 L/min
前向き reserve の問題が前面。導入での血管拡張で低血圧リスクが高い。
昇圧薬と動脈ラインを早めに準備する。輸液を増やす前に forward flow の評価を。
LVEF 58%、E/e' 17、LAVI 40 mL/m²、頻脈傾向(HR 92)
充満圧上昇と congestion が前面。EF は正常に見えるが余裕は少ない。
「EF preserved だから安心」とならない。頻脈・輸液過多で急激に悪化しうる。
LVEF 40%、E/e' 15、LAVI 36 mL/m²、MR moderate
forward problem と filling problem が重なっている。どちらが今前面かを考える。
どちら「だけ」の問題でもない。CO・VTI・E/e' を合わせて評価し、今必要な対応を決める。
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