症例

症例:僧帽弁手術計画中の重症TR——同時処置を検討するか

重症一次性MRで僧帽弁修復が計画されている患者に中等度〜重症TRと弁輪拡大が確認された。左心手術と同時にTRを処置するかどうかの判断。

症例提示

62歳女性。フレイルリーフレット由来の重症一次性MR。僧帽弁修復術の計画中。術前エコーで中等度〜重症TR(ベナコントラクタ幅0.65 cm)と弁輪拡大(42 mm)が追加で確認された。RV機能は保持、肺高血圧は軽度。

MV修復の主な適応は確立しているが、TR・弁輪拡大の存在が同時処置を検討する根拠となりうる。MV修復後にTRが残存・進行するリスクを評価し、手術計画に組み込むかを判断する。

左心手術後のTR進行リスク

弁輪拡大が存在する場合、MV修復後に肺高血圧が解消されてもTRが持続・進行することがある。弁輪は自然には縮小しないためである。後日の単独TR手術は再手術として大幅にリスクが上昇する。

同時TR修復のガイドライン基準

ACC/AHA VHD 2020では、左心手術と同時のTR修復のClass I適応として:重症TRの存在、または軽度〜中等度TRと有意な弁輪拡大(≥40 mm)の組み合わせが挙げられる。この患者では中等度〜重症TRと42 mmの弁輪拡大の組み合わせがClass I適応に合致する可能性がある。

MV修復計画中に中等度〜重症TR・弁輪拡大42 mmが確認された。

  1. 1.
    外科チームと同時TR修復(弁輪形成術)を含む手術計画を検討する推奨

    ACC/AHA VHD 2020 Class I——重症TRまたは有意な弁輪拡大を伴うTRは左心手術時に同時修復を検討

  2. 2.
    MV修復のみを先に行い、術後TRを再評価する検討

    弁輪拡大が持続している場合、MV修復後もTRが残存・進行するリスクがある——後日の再手術リスクを考慮すべき

  3. 3.
    TR重症度が「中等度〜重症」でありClass I基準(重症)に満たないため処置しない非推奨

    有意な弁輪拡大(≥40 mm)があれば「軽度〜中等度TR」でもClass I適応となる——重症TRのみが基準ではない

教育的要点

  • 左心手術時のTR同時評価は、後日の再手術リスクを下げる重要な機会である。
  • ACC/AHA VHD 2020 Class I基準:左心手術時の重症TR、または有意な弁輪拡大(≥40 mm)を伴う軽度〜中等度TR。
  • 弁輪拡大は弁尖異常がなくても進行リスクの指標となる——弁輪は治療せずには縮小しない。
  • 最終的な手術計画は外科チームとの議論と術中評価によって決定される。本ツールは分類と参照に役立つが、手術計画の代替にはならない。

実際に使う

TR介入ナビゲーターで左心手術時の同時TR評価経路を確認する。

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