運動耐容能の低下:術前にどう評価するか
歩けているが息切れがある。この患者の FC は十分か?
症例提示
68歳男性。待機的な大腸手術の予定。術前外来での問診で「最近、階段を昇ると息切れがする」との訴えあり。
心疾患の診断歴なし。BMI 27。2型糖尿病(内服加療中)。安静時 SpO₂ 96%、HR 82、BP 138/86。心電図に明らかな所見なし。
このページを使う場面
ナビゲーターで FC が「低下の可能性」と評価されたとき。問診で息切れがあるが心疾患の診断歴がないとき。
4 METs 未満の活動制限があれば、追加評価を検討する
結論
この状況は追加評価が必要。階段昇降で息切れがある場合、活動能力が 4 METs を下回っている可能性があり、心臓予備能の低下として評価する。
METs(代謝当量)は心臓の予備能を日常活動から推定する指標。1階分の階段昇降はおよそ 4 METs に相当する。これが難しい場合、術中・術後の心臓負荷に対する余裕が限られている可能性がある。問診では「歩けているか」ではなく、坂・階段・速歩での症状を具体的に確認する。
- ① 息切れのパターンを確認する:労作時のみか、安静時にも出るか
- ② 坂道・荷物を持っての階段昇降など、4 METs 相当の活動が可能か掘り下げる
- ③ 活動制限を確認したら、BNP 測定と心機能評価の必要性を判断する
BNP と心機能評価が、次のステップを決める
結論
BNP を測定し、心エコーの必要性を判断する。客観的指標と主観的評価を組み合わせることで、リスクをより正確に評価できる。
運動耐容能の低下は、リスクのシグナルであってリスクの確定ではない。術式・既往・検査所見と合わせて評価する。BNP が高値の場合、その原因(左室機能低下・弁膜症・容量過負荷)を調べることが次のステップになる。
- ① BNP または NT-proBNP を測定する
- ② 心電図を再評価する(ST 変化・左室肥大所見など)
- ③ 心エコーが未実施であれば、実施を検討する
この判断の根拠
ACC/AHA 2014 Guideline on Perioperative Cardiovascular Evaluation(functional capacity assessment section)/ JCS 2022「非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン」
運動耐容能が低下しているが、手術はどうする?
- 1.
心負荷・心不全の指標として有用。症状がなくても上昇していることがある。
- 2.
4 METs 未満の運動耐容能は独立したリスク因子として評価される。
- 3.
手術リスク・活動能力・既往歴を一括して整理できる。
教育的要点
- 4 METs 未満の活動能力が確認された場合、追加評価を検討する。「歩けている」という印象だけでは評価できない。
- 問診では、坂道・階段の具体的な症状を確認する。活動回避パターンが、潜在的な運動不耐容を示していることがある。
- 運動耐容能の低下はリスクのシグナル。術式・既往・BNP・心機能と組み合わせて総合的に評価する。
次の臨床的問い
BNP が高値だった場合、次に何を確認すべきか?
症例:BNP 高値の評価 →