出血患者でROTEMをどう読むか
周術期出血におけるROTEMパターン認識の実践ガイド。CT、FIBTEM MCF、EXTEM、線溶所見を、標的を絞った補正と再評価につなげる。
要点まとめ
- 大量出血では、フィブリノゲンの寄与が早期に低下しやすい。血小板補充を考える前にFIBTEM MCFを確認すると、より標的を絞った補正につなげやすい。
- FIBTEMが保たれている一方でCTが延長している場合、凝固因子低下、ヘパリン影響、希釈、低体温、採血タイミングなどを考える。FFPやPCCは、出血パターン、臨床状況、施設プロトコルに基づいて検討する。
- EXTEM MLの上昇などは線溶亢進を示唆しうる。ただし抗線溶薬の適応は、出血パターン、手術の状況、既投与薬、施設プロトコルと合わせて判断する。
ROTEMは、ポイントオブケアで凝固形成、clot firmness、線溶を時間軸で把握できる。重要なのは、数値を読むことだけではない。どのチャンネルがどの問いに答えるのかを理解し、パターンを臨床的な行動と再評価につなげることである。
各パラメータが答える問い
| パラメータ | 反映する内容 | チャンネル |
|---|---|---|
| CT(凝固時間) | 血餅形成が始まるまでの時間 — 主として凝固因子活性を反映する | EXTEM, INTEM |
| CFT / α角 | 血餅の増殖速度 — フィブリノゲンと血小板の寄与に依存する | EXTEM, FIBTEM |
| MCF(最大血餅硬度) | 完全形成した血餅の強度 — フィブリノゲンと血小板の複合的効果 | EXTEM, FIBTEM |
| ML(最大線溶) | 60分時点の血餅の溶解割合 — 線溶亢進の検出に用いる | EXTEM |
パターンの読み方と次のステップ
| パターン | 主な所見 | 考えられる原因 | 検討する介入 |
|---|---|---|---|
| 凝固因子低下 | EXTEM CT延長、FIBTEM MCF正常 | 凝固因子が低下している可能性 | FFPまたはPCCを検討する |
| フィブリノゲン低下 | FIBTEM MCF < 8–10 mm | フィブリノゲンの消費または希釈 | フィブリノゲン製剤またはクリオプレシピテートを検討する |
| 血小板の問題 | EXTEM MCF低値、FIBTEM MCF正常 | 血小板数低下または血小板機能低下 | 血小板輸血を検討する |
| 線溶亢進 | EXTEM ML > 15% | 血餅の活発な溶解 | トラネキサム酸を検討する |
| 複合凝固障害 | 複数チャンネルに異常 | 複合的な欠乏 | 最も欠乏した成分から補正を検討する |
フィブリノゲンを先に確認する
多くの大手術出血では、フィブリノゲンが最初に臨界レベルに達しやすい。FIBTEM MCFが低い状態で血小板を先に補充しても、効果が限定的になることがある。FIBTEM MCFが低い場合はフィブリノゲン補充を先に検討し、補正後のclot firmnessの変化を再評価する。
所見を補正につなげる
- EXTEM CT延長 — FFPまたはPCCを検討する。INTEM CTとの比較が内因系・外因系の鑑別に役立つ場合がある
- FIBTEM MCF < 8 mm — フィブリノゲン製剤の補充を検討する。体重と目標MCFに基づく投与量の計算には補充計算ツールを使用する
- EXTEM MCF低値でFIBTEM MCF正常 — 血小板輸血を検討する。FIBTEM MCFが範囲内であれば、フィブリノゲン補充の効果は限定的である
- EXTEM ML > 15% — トラネキサム酸を検討する。30分後にEXTEMを再測定して反応を確認する