周術期呼吸管理

術後肺合併症(PPC)の要因と対策を学ぶ。ARISCAT によるリスク評価・ABG 解釈・PPC 発生率を下げるための臨床戦略。

まずツールで評価する

ARISCATで術後肺合併症リスクを推定します。患者因子、酸素化、最近の呼吸器感染、貧血、手術部位、手術時間、緊急性を統合して、術前の呼吸リスクを整理します。

術後肺合併症リスクを評価する

このページの使い方

  1. 1.まずリスクを把握するARISCATでPPCリスクの土台を整理する。
  2. 2.サインを解釈する低SpO₂、最近の感染、COPD、手術部位、手術時間はそれぞれ意味が異なる。
  3. 3.計画を変える変えられる因子は最適化し、変えられない因子は術中換気・鎮痛・術後サポートに反映する。

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基礎的な概要

Level 1 — 全体像

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周術期呼吸評価とは何か

周術期に呼吸評価が必要な理由は単純だ。術後に肺が悪くなる患者がいる——そしてその多くは、術前からサインを出している。

このページでは、PPCを減らすために「何を見るか」「何を変えられるか」を整理する。ARISCATを使う前に、その全体像をつかむ地図として使ってほしい。

術後肺合併症(PPC)とは何か

PPCには以下が含まれる。それぞれが独立した問題ではなく、連鎖して悪化することが多い。

  • 無気肺 — 術後早期から起きやすく、肺炎の呼び水になる
  • 肺炎 — 最も予後に影響し、死亡リスクと直結する
  • 急性呼吸不全 — 酸素療法やNIVが必要になる状態
  • 胸水・気管支痙攣 — 重症化因子として加わることがある

意外と多い

ARISCATの原著研究では、高リスク患者のPPC発症率は42%だった。まれな合併症ではない。意識して取り組まないと、この数字は変わらない。

まず押さえる4本柱

周術期呼吸評価の4本柱
何を見るかなぜ重要か
患者因子年齢・SpO2・感染・貧血・COPD患者固有のリスク。一部は術前に変えられる
酸素化・換気術前SpO2・呼吸機能予備能肺の「余力」を示す。低いほど術後が苦しい
手術侵襲部位・時間・緊急性横隔膜に近いほど、長いほど肺へのダメージ大
術後管理鎮痛・離床・呼吸訓練適切な管理でPPC発症を減らせる

術前で見るべき患者因子

患者側のリスクは、次の5つで整理できる。これが重なるほど、術後に肺が悲鳴を上げやすい。

  • 高齢(51歳以上)— 加齢に伴い呼吸筋力が落ち、咳反射が弱まる
  • 術前SpO2低下(96%未満)— もともとの呼吸予備能が不足しているサイン
  • 最近の呼吸器感染(1カ月以内)— 気道が過敏になり、分泌物が増える
  • 術前貧血(Hb ≤10 g/dL)— 血液が酸素を運ぶ力が落ち、呼吸仕事量が増える
  • COPD・喘息・喫煙歴 — もとから肺の余力が少ない

感染があれば延期を考える

1カ月以内の呼吸器感染は、ARISCATで最も点数が高い因子のひとつ(+17点)。待機手術なら、感染が落ち着くまで延期する価値がある。気道の回復には通常2〜4週かかる。