症例

ROTEMが補正されても出血が続くとき:外科的出血を考える

VET所見が改善しても出血が続く場合、次の判断は製剤追加とは限らない。術野所見、外科的止血、タイミング、生理学的条件を再評価する。

症例提示

63歳男性。再手術の僧帽弁手術をCPB下に受けた。プロタミン投与後にびまん性出血があり、fibrin-based clot firmnessが低下していた。施設プロトコルに従ってフィブリノゲン補充を行い、体温とカルシウムも補正した。再検したROTEMではFIBTEMが改善し、EXTEM clot firmnessも許容範囲となった。線溶亢進は目立たない。しかし胸腔ドレーン排液は多く、外科医は後房室間溝付近に持続する出血部位を認めている。

検査は改善した——しかし出血は改善していない。

考える順序

  • VET所見が改善しても外科的出血は否定できないことを認識する。
  • びまん性の凝固障害によるoozingと、限局した持続出血を分ける。
  • 検査所見が補正されているのに反射的に製剤を追加しない。
  • 術野と外科的止血を再評価する。
  • 生理学的補正とモニタリングは継続する。
  • VETを「出血が止まった証明」ではなく、補正後の再評価として使う。

A. 補正後に何が変わったか

  • fibrin-based clot firmnessは改善した。
  • global clot strengthは許容範囲になった。
  • 線溶が主所見ではない。
  • しかし出血は期待通りに改善していない。

B. なぜ「さらに製剤」ではないのか

  • VET改善は、測定された凝固パターンが改善したことを意味する。
  • 持続する多量出血や限局出血は外科的出血を示唆する。
  • 製剤追加だけでは出血源を解決できず、リスクを増やすことがある。

検査の改善は出血が止まった証明ではない

VET所見が補正されても、それは測定された凝固が改善したことを示すだけで、止血を確認したわけではない。検査が改善しても出血が続くときは、別の製剤に手を伸ばす前に、その不一致を出血パターンと術野の中で解釈する。

C. 外科的出血を示唆する所見

  • 限局した持続出血。
  • clot patternが補正されてもドレーン排液が多い。
  • 手術部位や剥離面の近くからの出血。
  • 検査改善と臨床的出血の改善が一致しない。

D. 行動の枠組み

  • 「検査は改善したが出血が続く」という不一致を共有する。
  • 術野を再確認する。
  • 外科的止血を確認する。
  • 体温、pH、カルシウム、希釈の補正を継続する。
  • 出血パターンが変わる、または追加介入後に必要ならVETを再検する。
  • 画面上の数値だけを治療対象にしない。

Take-home message

VET所見が正常化または改善しても、外科的出血は否定できない。検査が改善しても出血が続くときは、外科的止血の確認が判断の中心に戻る。