症例

CPB後のclotting time延長:ヘパリン影響か、凝固因子低下か

CPB後のclotting time延長は、ヘパリン残存、凝固因子低下、希釈、低体温、採血タイミング、プロタミンの影響を反映しうる。重要なのは「プロタミンを追加するか」だけではない。

症例提示

74歳女性。CPB下に僧帽弁形成術を受けた。プロタミン投与後もびまん性出血が続いている。ACTはベースラインと比べて軽度延長にとどまる。ROTEMではヘパリン感受性チャンネルでclotting timeが延長しているが、ヘパリン中和チャンネルでは正常に近い。FIBTEM clot firmnessは許容範囲。血小板数は11万/µL。体温35.8℃、pH 7.31。

チームから「凝固因子低下か、ヘパリン残存か」と相談された。

考える順序

  • CPB後のclotting time延長はタイミングに依存して解釈する。
  • ヘパリン感受性チャンネルとヘパリン中和チャンネルの比較から、ヘパリン影響と凝固因子低下を分けて考える。
  • clotting time延長を一つの診断として扱わない。
  • プロタミン不足と過量の両方を考える。
  • 生理学的条件を補正し、出血を再評価する。
  • 外科的出血も鑑別に残す。

A. なぜCPBのタイミングが重要か

  • CPB中、プロタミン前、プロタミン後、CPB後出血は異なる臨床状況である。
  • ヘパリン投与と拮抗によりVETの解釈は変わる。

B. パターンは何を示すか

  • ヘパリン感受性チャンネルの延長があり、ヘパリン中和チャンネルで改善する場合、ヘパリン影響が関与している可能性がある。
  • fibrin-based clot firmnessが保たれていれば、フィブリノゲン低下が主病態である可能性は下がる。
  • 血小板の寄与と術野所見は引き続き重要である。

C. clotting timeを延長させる他の要因

  • 凝固因子低下 / 希釈
  • 低体温
  • アシドーシス
  • 採血タイミング
  • プロタミンの影響
  • 出血継続

D. プロタミンは「多ければよい」ではない

  • 不足すればヘパリン影響が残る。
  • 過量では抗凝固様作用や血小板機能への影響が問題になりうる。
  • 追加プロタミンは、パターン、ACTやヘパリン感受性データ、タイミング、施設方針が支持する場合に検討する。

clotting time延長はパターンであり、診断ではない

ヘパリン残存と凝固因子低下は同じような延長を示しうる。両者を分けるのはヘパリン感受性チャンネルとの比較、タイミング、出血パターンであり、検査値単独ではない。

E. 行動の枠組み

  • CPBとプロタミン投与との時間関係を確認する。
  • ヘパリン感受性チャンネルとヘパリン中和チャンネルを比較する。
  • ACTの推移と出血を確認する。
  • 術野を確認する。
  • 体温、pH、カルシウム、希釈を補正する。
  • パターンが支持する場合に限り、プロタミン追加または凝固因子補充を検討する。
  • 介入後に再評価する。

Take-home message

CPB後のclotting time延長は、凝固因子低下ともヘパリン残存とも限らない。タイミング、ヘパリン感受性チャンネルとの比較、生理学的条件、出血パターンを通して解釈する。