CPB後のびまん性出血:フィブリノゲンを先に考えるか、血小板を先に考えるか
CPB後のびまん性出血でfibrin-based clot firmnessとglobal clot strengthが低い場合、フィブリノゲン低下、血小板の寄与低下、または両者の混在を考える。判断はパターンに基づき、補正後に再評価する。
症例提示
68歳男性。CABGと大動脈弁置換術を受けた。プロタミン投与後、CPBから離脱したが、術野には明らかな一点の出血ではなく、びまん性のmicrovascular oozingが続いている。体温35.4℃、pH 7.29、イオン化カルシウムは低め、血小板数は9.2万/µL。ROTEMではFIBTEM clot firmnessが低く、EXTEM clot firmnessも低下している。線溶亢進は目立たない。
外科医から「血小板を先に入れるべきか」と相談された。
考える順序
- CPB後のびまん性出血であり、外科的出血だけでも血小板だけの問題でもない可能性を考える。
- fibrin-based clot firmness低下を、フィブリノゲンの寄与不足を示す重要な所見として読む。
- global clot strength低下は、フィブリノゲンと血小板の両方を反映しうることを理解する。
- fibrin-based clot firmnessが明らかに低い場合、血小板補充の前にフィブリノゲン補正を検討する理由を説明する。
- 生理学的条件を補正し、補正後の変化を確認する。
- 術野所見の確認を継続する。
A. 最初に何を分けるか
- 製剤に手を伸ばす前に、外科的出血、凝固障害、両者の混在のどれかを分ける。
- びまん性出血は凝固障害を示唆するが、外科的出血を除外しない。
B. VETパターンは何を示すか
- fibrin-based clot firmness低下はフィブリンの寄与不足を示唆する。
- global clot strength低下はフィブリノゲンと血小板の両方を反映しうる。
- 線溶亢進が目立たなければ、今回の主所見は線溶ではない。
C. なぜ血小板だけで考えないのか
- 血小板数は低いが、フィブリンの寄与が弱いとclot strengthは十分に上がらない。
- 血小板補充だけでは、フィブリノゲン制限のあるclotを改善できないことがある。
- CPB後は複合病態が多い。
fibrin低下のシグナルは自動的な輸血指示ではない
fibrin-based clot firmness低下は、どこを見て何を準備するかを示す。出血パターンと術野の中で解釈し、標的を絞った補正後に再評価する——その値だけで製剤投与が決まるわけではない。
D. 行動の枠組み
- 大きな限局性の外科的出血がないか確認する。
- 体温、pH、イオン化カルシウムを補正する。
- フィブリノゲン濃縮製剤またはクリオプレシピテートを施設プロトコルと血液バンクの入手性に基づいて検討する。
- VET所見と実際の出血を再評価する。
- フィブリノゲン補正後も血小板の寄与低下を伴ってclot strengthが低い場合、血小板補充を検討する。
- 外科的止血の確認を継続する。
Take-home message
CPB後のびまん性出血でfibrin-based clot firmnessが低い場合、フィブリノゲンの寄与が最初の補正対象になりやすい。ただし、患者、術野所見、生理学的条件、補正後の再評価が介入の順序を決める。
続けて学ぶ
CPB後のclotting time延長:ヘパリン影響か、凝固因子低下か
CPB後のclotting time延長は、ヘパリン残存、凝固因子低下、希釈、低体温、採血タイミング、プロタミンの影響を反映しうる。重要なのは「プロタミンを追加するか」だけではない。
ROTEMが補正されても出血が続くとき:外科的出血を考える
VET所見が改善しても出血が続く場合、次の判断は製剤追加とは限らない。術野所見、外科的止血、タイミング、生理学的条件を再評価する。
大量出血後の低MA / clot stiffness低下
大量出血後のclot strength低下は、血小板の寄与、フィブリノゲンの寄与、希釈、生理学的条件、または複合病態を反映しうる。治療を選ぶ前に構成要素を分けて考える。